いわて地元学実践フィールド 横田町 写真
気仙川を中心に「川」にまつわる資源が豊富な横田町
 
実例 1
陸前高田市 横田町 地図

陸前高田市 横田町 四季を彩るまちづくり


地域の現況
 陸前高田市は、岩手県の南東部に位置し、南は宮城県に隣接している。山と海と気仙川等の清流からなる調和のとれた景観が特徴である。横田町は中心市街地から、国道340号を気仙川に沿って10kmほど北上した位置にある。東西を急峻な山に囲まれ、南北6kmに及ぶこの地域には、気仙川に注ぐ16の沢ごとに集落が形成され、穏やかな農村景観が見られる。
 世帯数455戸、人口1570人(平成17年1月1日現在)

横田地域農村
景観を考える会
事務局長
畠山克輝さん

事務局長 畠山克輝さん

 

●自分たちでできることから
横田ツアーで価値を再発見した板橋
 陸前高田市では、各地区で市政懇談会が開かれている。開催は2年に1回。地域をどうしていくかといった意見が活発に交わされるのだが、懇談会が終わると、それでおしまいの感があった。「行政におんぶにだっこではなく、自分たちでできることから体を使って何かやってみよう。」との声が上がり、平成8年4月に設立されたのが「横田地域農村景観を考える会」だった。会を立ち上げてまもなく、全国太鼓フェスティバル会長で、地域づくりアドバイザーとして知られる河野和義さんから、熊本県水俣市で実践された「地元学」による地域の活性化を横田町で実践してみないかと勧められ、首都圏の人を招き、「横田ツアー」を行うことにした。ツアーと言っても、ありのままの横田町を参加者が歩いてみるというものだった。
 「横田は何もとりえのないところだと思っていましたが、ご指導いただいた方々に励まされてやってみました。」と、「横田地域農村景観を考える会」事務局長の畠山克輝さんが話すと、「一番驚いたのは、板橋に感動してもらったことです。 大水の時、流されてもいいようにできているのですが、私たちにとってはただの見慣れた橋でしたから。」と、同会前副会長の砂田康郎さんが言葉を続けた。
 昼食は婦人会の協力の下、川ガニを使った郷土料理「ガニのフワフワ」や煮しめ、焼きホタテ、みそおにぎりなどを提供し、参加者から「弟子入りしてレシピを伝授してもらいたい。」との絶賛の声を得る。自分たちの等身大の暮らしの中に、「地域資源」があることをツアーによって知ることができた。

●地域資源のデータづくり

作成した横田町資源カード
資源マップを元に作成されたパンフレット
地域のイベントとして定着した「気仙沼舟下りツアー」

 当初の地域資源調査は、熊本県水俣市で行われた手法、つまり「水のゆくえ」を調べる方法だった。しかし、同会では「あらゆる資源を調べてみよう。」と調査を深めていくことにした。町内8行政区ごとに聞き取り調査をし、樹木、人、道具、伝説などの「資源」を収集し、資源カードを作成した。そして資源カードをもとに資源マップを作り、さらにそれを絵地図にして、パンフレットを作成した。
 地元学の取り組みにおいて最も気をつけた点について畠山さんは、「なるべく地域住民全員参加のかたちにしていくことです。特定の好きな人がやっているんだろうという見方をされては困りますから。」と言う。
 全員参加にしていくために、同会では小学校・PTAと共催での「ホタル発見隊活動」や、「気仙川舟下りツアー」「写真コンテスト」など、住民の目を地域に向けさせるイベントを積極的に開催。「気仙川舟下りツアー」は以来、毎年継続して開催している。さらに、平成14年からは、毎年11月に横田地区コミュニティ推進協議会が中心となって、アユの塩焼きや農産物の販売などを行うイベント「横田あゆの里まつり」を開催するようになり、地域を活気づけている。

●まちづくり案の作成・提案へ  
 地元学の実践を行い、集めた地域資源データをどう活用するか。横田町では次の3つの使い方を考えた。
 (1)ホームページによる情報発信
 (2)市総合計画への提案
 (3)子どもたちの総合的な学習の資料
 市総合計画への提案は、横田地区コミュニティ推進協議会によってとりまとめられた。「『森と海の仲人』気仙川を核として、地域資源を活用するまちづくり〜四季を彩るまちづくり」と題して平成12年2月に作成された。そこには次のような具体的な整備計画が提案されている。

●四季を彩るまちづくり
1. 快適環境整備・自然と共生する環境の創出
 (1)地区内のネットワークの形成のための道路網の整備
 (2)良好な住環境の整備と気仙川の清流化を図るための上水道施設や汚水処理対策
 (3)水と花や緑に親しむゾーンの整備
2. 安全・安心社会の創出
 (1)気仙川の洪水や災害など防災対策のための道路網の整備
 (2)高齢者の交通手段を考慮した高齢者の家の整備
3. 元気産業の振興
 (1)高齢化、少子化による地域農業の継続のための担い手育成
 (2)雇用の場の確保
 (3)地域の資源を活用した産業、交流の拠点の整備
 (4)情報産業を活用し、地元学の成果などをホームページ発信
 (5)気仙大工左官の伝統技術の発祥の地であることから、匠塾の誘致

●まちづくり提案から「川の駅」へ
 横田地域農村景観を考える会の会員で、当時、陸前高田市企画部まちづくり推進課だった白川光一さんは、「以前、私は個人的に、開発は横田にはいらないと思っていました。しかし、地元学をやって、地域資源が見えてきた今は、例えば気仙川沿いの交流拠点の整備など横田に合った整備をしてほしいと考えるようになりました。」と、地域を考える視点の変化を説明する。
 現在、市総合計画によって、横田町に「川の駅」の整備(平成19年春完成予定)が進められている。この施設は、都市・農村交流センター、産直、郷土食を提供する食堂、グリーンツーリズム等の情報発信の機能をもつ。平成17年1月には産直生産組合と食堂経営組織が設立。ほかにグリーンツーリズム部会が地元学の資源を再び見直し、検討するなどして、「川の駅」のオープンに向け、物心両面での準備を始めたところである。