いわて地元学実践フィールド 台温泉 写真
平成13年に行われた湯田町左草地区の地元学
 
実例 3
湯田町左草地区・沢内村大野地区 地図

湯田町左草地区・沢内村大野地区 地域まるごと博物館に


地域の現況
 西和賀は、岩手県の西部に位置し、西に秋田県境となる奥羽山系を配する豪雪地帯。温泉のある駅舎「ほっとゆだ」(平成元年3月完成)をはじめ「温泉」をテーマとした町づくりで知られる湯田町と、「治雪・活雪・親雪の村」として知られる沢内村からなる。
湯田町左草地区 世帯数49戸、人口161人
沢内村大野地区 世帯数54戸、人口193人
(平成17年1月末日現在)

 

●広域エコミュージアムへ向けて
大野地区の調査を前に、地元の説明をする広田教授
 「西和賀広域エコミュージアム構想」は、豊かな緑あふれる自然と伝統文化を守りながら暮らす西和賀(湯田町・沢内村)のすばらしさをエコミュージアムとして広く情報発信しようという取り組みである。西和賀広域エコミュージアム構想策定検討委員会によって、平成14年3月に最終案がまとめられた。地域がまるごと博物館として機能するエコミュージアムでは、地域のどんなところにどんな地域資源があるかを再発見することが重要で、地域資源の大切さや資源を守る意味を地域住民が認識していることが望まれる。
 そこで湯田町ではエコミュージアム構想の検討に先立ち、平成13年に地元学の手法による地域資源調査が行われた。地元住民が主体となって地元学経験者の指導を受けながら地域の宝(地域資源)を見つめ直す(再発見)というものである。
 左草地区の地元学実践には、地元住民18人に加えて岩手大学学生や西和賀文化遺産伝承協会、町職員など約30人が参加。岩手大学農学部広田純一教授の指導により、5班に分かれて集落点検を行った。6月の点検結果は、9月に資源整理表としてまとめられた。現在、事務所は廃校となった左草小学校に置いている。

●人と自然と環境を守り育てる
豪雪地帯特有の屋根のかたちをした小屋 エコミュージアム構想のキャッチフレーズは「西和賀の人と自然と環境を守り育てる豊かな里づくり」。基本方針は、西和賀地元学の推進、自然環境の保全活動の推進、文化の伝承活動の推進、資源循環を基調とする地域社会の構築、各種地域資源を生かした交流活動の推進、の5項目となっている。
 湯田町では、左草地区に続いて、下前、湯川、耳取・草井沢、湯田、新田郷(越中畑)でも地元学が行われ、データの取りまとめに向かっている。足並みを揃えるかたちで沢内村でも、安ヶ沢・丸志田、川舟、若畑で地元学を実施。平成17年度にも両町村で1カ所ずつの地元学の開催が計画されている。
 また、地元学を住民に周知し、地域資源の情報をより多く集めるために、エコミュージアム構想をPRするチラシや「宝物投票用紙」を作成し、住民に配布。地域の自然、神社や遺跡、蔵の収蔵品、もの知りのお年寄り、郷土料理、趣味グループなどについて、推薦理由やエピソードを添えて募集するものをした。

●いち早く地元学を導入
 ところで、左草地区でエコミュージアム構想の立ち上げを目的とした地元学が行われる以前に、沢内村では県内でも早い時期に、地元学の実践が2回行われていた。
 1回目は平成12年7月に西和賀文化遺産伝承協会、イオングループ環境財団、里地ネットワークが長瀬野・両沢地区で開催した「西和賀の里 生活たんけん隊」。当時はまだ目新しかった「地元学」というものに興味を持つ人々が集まり、85人の参加者があった。2日間にわたる活動の始めに、里地ネットワークの竹田純一事務局長から地元学の歴史や手法などの説明があり、その後、実践を行った。翌日の午前中は地域資源シートづくり。シートは300枚余りになり、「資源」について発表と意見交換が行われた。

●総合学習の教材として検討も  
子ども班は和賀川で「あるもの探し」をした結果を発表  沢内村での地元学の2回目は、同年10月に大野地区で、西和賀文化遺産伝承協会が開催した「地元学を学ぶ会」である。
 大野地区の地元学では、小中学校で段階的に導入が開始されていた「総合的な学習の時間」への教材として地元学の実践学習が取り入れられるかどうかの検討も兼ねていたため、沢内村・湯田町の学校関係者を含む約70人が参加した。実践方法の指導は、岩手大学農学部広田研究室(広田純一教授)が行った。大野地区を6つのエリアに分け、エリアごとに集落点検班を設けたほかに、民家班、菜園班、保存食班、郷土食班、子ども班など合計11班で構成。「あるもの探し」をし、身近なことを見直すことによって、地域の生活者の技術や能力、地域の暮らしぶり、環境などを掘り起こした。また、平成15年度からは西和賀広域エコミュージアムだより「えこみゅう」を発行し、活動内容を住民に伝えている。
 資源調査によって集まった「お宝」の写真は500枚余り。集落点検マップと集落点検表、地域資源カードは、班ごとに1冊のファイルにまとめられ、大野地区ふれあい館(公民館)に保管されることになった。
地域資源カードを総合すると地域の姿が見えてくる 集落点検班に参加した沢内村教育長の高橋繁さんは「地元学は学校教育にも生かしていける実践的な学習であると感じました。理屈でなく、実際に歩き、大地に足をつけて、具体的に感じ、疑問は年配者に聞いていくという作業が心の空白を埋めていく力になっていくと思います。」と、実感を込めて感想を述べた。
 また、区長の泉川助五郎さんは「大野地区は30年ほど前に農地基盤整備をし、地域の様子が変わりました。そのため、それ以前の地域の様子がわからなくなりつつあります。今、私たちが地域の暮らしを掘り起こし、孫の時代に伝えることが大事なことだと思います。」と、地元学に寄せる思いを話している。