いわて地元学実践フィールド 地域を歩いて「何をしているんですか?」と仕事を尋ねる
地域を歩いて「何をしているんですか?」と仕事を尋ねる
 
実例 5
住田町下有住月山地区
住田町下有住月山地区 地域の「宝」を子どもたちの心に


地域の現況
住田町のほぼ中央に位置し、火の土川、新切川、気仙川とその他の小さな沢が数多く流れる水の豊かな地域。火の土、新切、外館、月山の4つの集落がある。自然に恵まれた環境ではあるが、少子高齢化の進行が深刻で、高齢化率は35.7%。文化や伝統を次世代に伝える人材の不足、高齢化による工作放棄地の増加などが地域の課題となっている。
世帯数 282戸
人口  918人 (平成14年5月1日現在)

住田町下有住
地元学
実行委員長
佐藤忠美さん

住田町下有住地元学 実行委員長 佐藤忠美さん

 

●子どもも親も「学ぶ人」
 下有住小学校は、地域に夢や誇りを持った子どもたちを育てようと、地域の良さを知るための親子会活動を盛んに行っている。月山親子会の平成12年度の活動テーマは「地域の産業を学ぶ」。地域の職場を視察体験し、どんな会社や仕事があるのかを学習することになっていた。その内容が大船渡地方振興局の推進する地元学塾に共通するところがあったことから、視察体験の幅を広げ、地元学に取り組んでみることになった。
 平成12年10月7日、まず親たちを集め、地元学のオリエンテーションを行った。その時の資料には「(地元学とは)住民が暮らしと地域を見つめ直し、地域を構成する自然や文化、歴史、風土、産業などを育てながら、力を合わせて地域を創造していこうとの取組み」とある。初めて行う地元学では、子どもも親も「学ぶ人」となった。

●資源調査は「推理ゲーム」
タバコの葉の乾燥に使われていた蔵へ向かう子どもたち 11月11日(土)午前9時、下有住公民館に集合した子どもたちに、主催者スタッフから以下のような説明があった。
 「みんなで一緒に『推理ゲーム』をしましょう。山や川や道を見て、いろいろ推理してみてください。これから月山地区のいろんなものを見て歩きます。この神社はなぜここにあって、どんな思いが込められているのか推理してみてください。道端の植物などもじっくり見ながら歩いてね。子どもたちは、わからないことを全部大人に聞きましょう。なんでこれがここにあるの? これはいつ食べられるの? それらを地図の中に絵で描いていきましょう。どんどん写真も撮りましょう。後で写真を貼ったカードを作って、その中に『これは何でしょう? じいちゃんはこう言っていました』というようなことを書き込みます。」
 子どもも大人も各自で、月山地区の地図と鉛筆を持ち、地域資源調査ツアーに出発。市販の地図ではむずかしいだろうということで、事前に父兄が描いた絵地図を使用した。歩きながら、見つけたものや、聞いたことなどを各自、絵地図に言葉や絵で記入。カメラの係はそのポイントを撮影した。ツアーの時間は約2時間。気仙川だけでなく、湧水や伏流水が豊富なこと、たくさんの神様が祀られていることなどに気がついた。

●イラストマップを全世帯に配布  
地元学の成果をまとめた「月山イラストマップ」  その日の午後は資源カード作り。公民館には地域のお年寄りが呼ばれ、「これは何?」「どんな風に使っていたの?」と、子どもも親も質問する。日をあらためて地域資源マップを作成した際にも、お年寄りが参加し、「昔ここにあったもの」や「かつての産業(金掘りや炭焼きなど)」を聞き取った。
 まとめ作業は、延べ3日間を要してていねいに行われた。資源カードと地図を見ながら、地域の特徴を見つけ、テーマ別に掘り下げる。テーマは、「気仙川のすがた」「気仙川の伏流水」「神様」「山の役割」「モノ(交易)の流れ」「家のつくりと様子」「仕事に必要な道具」など。また、家・田畑・川・山・里でどんな作業をして、それがどのように関連しているのかをまとめた「月山地区の仕事と暮らし」、季節ごとの仕事と食べ物の関連をまとめた「月山の暮らし暦」を図式化した。まとめてみると、自然の資源や季節のサイクルと人々の暮らしが密接に関係していること、かつては基本的に「自給自足」の暮らしであったことなどが見えてきた。これら地元学の成果をまとめた「月山地区イラストマップ」は、月山地区の全世帯に配布した。

●お宝紹介ツアーを開催
平成13年の「下有住地元学資源調査発表会」 今回の地元学の最終目標が「地元学ツアー」。月山親子会が企画・主催して、地区外の人を招き、地域の宝を案内して歩くツアーである。平成13年3月4日に開催された。
 ツアーは2班に分かれ、各班には親子会のメンバーとともに地域に詳しいお年寄りの「案内人」が加わり、宝のポイントではそれについて説明し、ツアー参加者の質問に答えながら歩く。さらに神社などでは、由来や歴史に詳しい別の「案内人」が解説した。
 下有住基幹集落センターに戻ってきたツアー一行を、地域のお母さんたち手作りの昼食が待っていた。昼食後は、地域の青年たちによる郷土芸能「高瀬鹿踊り」の披露。首都圏からの参加者には「鹿踊りを初めて見た。」という人も多かった。
 そして最後にツアーの感想を話し合った。参加者からは「今度は緑の季節に来て、もっとゆっくりと地元の方々と交流したい。」「ホームページを作って発信しては?」「地域を大事にしている人々の温かさが一番すばらしい。」などとさまざまな意見が出た。
 案内人を務めた佐々木勝雄さんは「月山地区の戦前の様子や神様の由来など、前々から若い人に語り継いでおきたいと思っていたので、地元学はとてもいい機会になりました。PTAの若いお父さん、お母さんたちも『初めて知った』ということがたくさんあったようです。子どもたちは進学や就職でやむを得ず地域を出ていく子も多いでしょうが、いつまでも地域の良さを覚えていてほしいと思いますし、そういう思いを持ってもらうためにも、地元学は良い活動だと思います。」と話した。

●下有住地区地元学塾へ
平成16年には「地元学オリエンテーリング」を実施 平成13年度は、宝さがしの範囲を下有住全域に広げて行われた。10月27日、子どもからお年寄りまで150人余りが参加。「火の土地区は屋号など。新切地区と月山地区は暮らしに関わる水まわりとあるもの探し。外館地区は水のゆくえ」と地区ごとにテーマが掲げられ、お宝ツアーに出かけた。集落ごとにまとめ作業が行われた後、12月1日には、生涯スポーツセンターにずらりと資源カードが並べられ、発表会が行われた。
 地元学塾の実行委員長を務めた佐藤忠美さんは「地域の宝を知れば知るほど、地元のことが好きになっていきます。自分たち親の世代が、お年寄りと子どもの橋渡し役となって、若い世代にも下有住の良さを伝えていきたい」と話した。
 子どもを主役とした地元学はその後も毎年継続している。平成16年には下有住地区森林愛護少年団の活動として「地元学オリエンテーリング」を実施。チェックポイントを設け、地元の人に質問するクイズがあったり、4地区の利き水をしたりと、楽しみながら地元を歩いた。このような企画がすぐにできるのも、地元学が地域の人々に浸透したからこそであろう。