いわて地元学実践フィールド 根田茂・砂子沢地区 写真
 
実例 8
盛岡市根田茂・砂子沢地区
盛岡市根田茂・砂子沢地区 里山の自然と文化を生かして


地域の現況
盛岡市の市街地から国道106号の簗川沿いに10kmほど遡り、さらに梁川の支流、根田茂川の上流へ進むと根田茂、砂子沢の集落がある。川井村、大迫町、紫波町に隣接するこの山間地域は、近年、簗川ダムの建設地として知られるようになったが、昭和40年ごろまでは馬と炭焼きの産地であり、今も当時の面影を残した自然豊かな地域。根田茂地区はかつては46戸の集落であったが、梁川ダムの建設地となり24戸が転出して戸数が22戸に減少した。砂子沢地区は、大迫町の早池峰岳神楽との交流があり、古くからの伝統文化が色濃く残っている。
盛岡東部地域づくり推進協議会 吉田俊和会長   根田茂地区「心和会」 澤口忠会長   砂子沢自治振興会 佐々木新吉会長  
盛岡東部地域づくり推進協議会
吉田俊和会長
  根田茂地区「心和会」
澤口忠会長
  砂子沢自治振興会
佐々木新吉会長
 
○盛岡東部地域づくり推進協議会
 設立/平成10年 代表/吉田俊和 
 岩手県盛岡市川目4-68 
 電話・FAX/019-666-2002

 

●川でつながる里山の地域づくり
 根田茂・砂子沢地区は、ともに「盛岡東部地域づくり推進協議会」に参加して、熱心な地域づくり活動を行っている。「盛岡東部地域づくり推進協議会」は、根田茂・砂子沢地区と川目、簗川地区を含む旧簗川村4ケ村の住民代表が集まり、平成10年に発足。産直「てんぐの里106」の運営のほか、平成11年からは、旧根田茂小学校を会場に、都市と農村の交流を目的とした「ねだも・いさござわ川上・川下ラブラブ交流」を主催してきた。
 根田茂と砂子沢はそれぞれが独立した集落で、住民の大半は代々この土地で暮らしてきた60歳代以上の人たちが占めている。集落の高齢化が進む中、地域の活性化を目的に、当初は個々に地域づくりに取り組んでいた。
 ここ数年、「ラブラブ交流」の成果や、簗川ダムの建設にともなう自然観察会など、地区を訪れる人が増えているという。その現状をふまえ、根田茂地区「心和会」の会長を務める澤口忠さんには「通りすがりに根田茂を訪れ、山が美しい、水がきれいだとただ眺めて帰るのではなく、自然と触れ合い対話できる場所としての魅力を発信していきたい。」という思いがあった。
 また、現在56戸からなる砂子沢自治振興会の会長、佐々木新吉さんも「砂子沢は山里ではあるが、古くから大迫や乙部と交流してきており、伝統芸能なども伝わっている。それらの古い記憶や歴史を自分たちの孫子の世代に伝えたいと思っても、どんな風に残したらいいのか、きっかけがつかめずにいた。」と話す。

●お宝探しに輝く笑顔
砂子沢の山祇神社前にて そんな中、平成13年11月10日に砂子沢、11月11日に根田茂にて第1回目の地元学を開催した。砂子沢は20人の地区住民を含めて61名、根田茂は19名の地区住民を含んだ47名が参加。「地元学」の主役はもちろん地域住民で自治体からの参加者らは住民のサポート役を務めながら地元学とは何かを体験した。以後、平成14年の2月まで、根田茂、砂子沢それぞれの地区ごとに3回に渡って「地元学」の取り組みが行われた。
 地元学では、地域住民自らの手で作り上げた「お宝マップ」が作成された。「お宝マップ」を前に、住民からは「俺たちの故郷も捨てたもんじゃないな。」という希望に満ちた感想が寄せられた。
 地元学の作業終了後、両地区では地元の人たちの好意により、郷土料理を囲んでの懇親会が開かれた。山菜料理や手打ちソバなど土地の食材を生かした手作りの料理が振舞われた。料理の準備のために会場を訪れていたお母さんたちも、用意の合間に「地元学」の親しみやすい雰囲気や、自分たちの地域の「お宝」の魅力に触れる機会が得られたのもいい結果となった。嫁いできて数十年になる女性らが、「小さな集落に暮らしているのに、まだまだ知らないことが沢山あることを知り興味深かった。」と驚きとともに感想を語る姿からは、改めて地元学に対する関心が深まったことが伝わってきた。

●山菜の地元学と祭りの地元学
根田茂・砂子沢地区は山菜の宝庫 お宝(地域資源)を生かす様々な地域住民の思いやアイデアを生かすため、平成14年度も岩手大学農学部の広田純一教授をコーディネーターに迎えて地元学に取り組んだ。
 平成14年度は、「山菜の地元学」、「祭の地元学」が行われた。二つの地元学に先駆け、4月24日、根田茂・砂子沢地区合同で「実践テーマ探しのワークショップ」を開いた。
 ワークショップでは、前年度の「地元学」を受け、今後、どんな地域づくりを行なっていきたいのか、住民たちの声をまとめる作業を行なった。住民たちからは、炭焼き窯の復活、清流を生かして簗を整備し、子供たちの体験学習の場を作りたい。水車やバッタリー(水を利用して穀物を製穀・製粉する施設)の復元と食文化の発信、お宝マップを利用した地域散策のスタンプラリー開催、などのさまざまな意見やアイディアが寄せられた。「山菜の地元学」も「祭の地元学」も地域づくり実践テーマのアイデアから生まれた。

◆山菜の地元学(平成14年6月2日開催)
 根田茂・砂子沢地区合同開催ということもあり、地元住民に岩手大学の学生や行政、地元企業からの参加者を含めると総勢で100人近い人数となった。
 根田茂・砂子沢各地区ごとに「山菜班」、「調理班」に分れ、朝の7時に集合し、里山に出かけて山菜を採集。よく似た山菜を見分けるコツなど、地元の人の知識を聞きながら山菜を採る経験は、地域外からの参加者たちにとって新鮮な感動の連続である。また、参加者の素直な反応の一つひとつが、地元住民にとっては確かな手応えとなる。こうしてお互いに心を通わせる瞬間を重ねることが「地元学」の成功につながってゆく。

◆祭りの地元学(10月12日開催)
「祭りの地元学」では、早池峰岳神楽を見学。神楽の締めに権現舞が披露された。 10月12日(第2土曜日)は旧砂子沢小学校側にある山祇神社の例大祭だ。砂子沢地区は大迫町と隣接しており、早池峰岳神楽と交流の伝統がある。正式な記録は残っていないものの「山祇神社のお祭りには何百年も前から早池峰神楽を招いている」というのが地元の誇りでもある。昭和20年代の半ばまでは夜店が何軒も立ち並び大勢の人で賑わったといい、砂子沢自治振興会会長を務める佐々木新吉さんら、当時の様子を記憶する世代は、この昔ながらの祭りの姿を大切にしながら「地域づくり」に結び付けていきたいと考えている。ゆくゆくは、手作りダンゴや杵つきもちなどを振舞う祭りの形を復活させたいというのが夢だ。

●地元学から地域づくりへ
厳選された地域資源が地域の案内板に生かされている  これら「祭りの地元学」や「山菜の地元学」など具体的な「地元学」を実践することによって、住民一人ひとりの中に「地域づくり」への思いが高まりつつある。「地元学」に取組むなかで、新鮮な驚きと感動を重ねながら、一人ひとりの思いを形にしていくことを考える時、地域の資源を生かした地域づくりが見えてくる。「地元学」に参加した誰もが、根田茂・砂子沢地区にある地域資源の豊かさを実感し、互いの思いに耳を傾けてきた。今後は、地域の思いの実現をどのように図るのかが課題である。平成15年、その課題解決のひとつが「ありぐマップ」の制作となって地域にお目見えした。「ありぐ」は土地の言葉で「歩く」である。地域住民が厳選したおすすめの地域資源が案内板となって根田茂・砂子沢両地区に設置された。