いわて地元学実践フィールド 15人のメンバーが写真を撮りながら街を散策
15人のメンバーが写真を撮りながら街を散策
 
実例 10
水沢市 中心市街地
水沢市中心市街地 活性化のために発掘を


地域の現況
今回、地元学の対象となった中心市街地とは、大畑小路、吉小路、大町、柳町、横町、東町、駅通り、青葉町、三本木、袋町、南町、中央通り、寺小路、春日町の14地区、約70haのエリア。藩政時代に伊達藩の家臣だった留守氏の城下町として発展した商業地と武家屋敷群のあった地域から成る。平成5年頃から中心地の空洞化が顕著になり、商店街に空き店舗が目立ち始める。高齢化も著しく、当該地域の高齢化率は34.34%。
世帯数1,271戸、人口3,063人
水沢商工会議所
振興課 
課長 菊地浩明さん
水沢商工会議所振興課 課長 菊地浩明さん

 

●「昔は良かった」の「昔」とは?
 多くの地方都市がそうであるように、水沢市の中心商店街も活気を失っている。水沢商工会議所では、平成11年度から水沢市が「魅力ある商店街づくり事業」として実施している空き店舗の家賃補助金制度の推進役を担ってきた。さらに同年には、空き店舗を利用して商店街に活気を呼び込もうと、水沢商業高校の学生たちのアイデアを生かして地場産品を販売する「ござえんちゃハウス」を開店した。平成13年度には、新しくビジネスを始めたい人に共益費のみで区画を貸し出し、経営などのアドバイスも含めてサポートするチャレンジショップ「あきんど考房21」を開設するなど、話題づくりはもちろんのこと、個別にきめ細かな空き店舗対策を講じてきた。
 「これまでも、さまざまな人がさまざまな手法で、地域の活性化に取り組んできましたが、何をしても特効薬にはならない。根本的に新しい切り口でやらなければならないのではないかと思っていたところで知ったのが地元学でした。」と、水沢商工会議所振興課課長の菊地浩明さんは語る。「中心市街地の住民たちが『昔は良かった』と言うけれど、その昔とは何なのか。どんな街の姿だったのかを知ることから、活気を取り戻すヒントが見つけられるのでは」と考えたのである。

●「点」でなく「面」として地域を見直す

間口が狭く奥に長い商家の面影を今に残している店
間口が狭く奥に長い商家の面影を今に残している店
めがね橋は立ち止まりたくなる懐かしい景観
めがね橋は立ち止まりたくなる懐かしい景観

 平成16年7月30日、第1回「地元学 in 水沢」が開催された。コーディネーターとして、ローカルジャンクション21(東京都)の浦嶋裕子さんを招き、地元学について理解を深めるための座学を行った。研究班(地元学ワークショップのメンバー)は、26〜65歳の15人で構成。歴史に詳しい住民、事業者、青年層、婦人層、郊外の住人、市外の住人など、あえて年代や職域、地域の異なるメンバーを集めた。コーディネーターもまた「風の人」として参加することで、地元の人が当たり前になっていて見えなくなっていることに風を当てていく役割を発揮するのである。
 第2回は9月16日に開催。駅周辺から商店街を歩いた。「寺院」「水の流れ」「古くからの道」などに注目しながら、それらの資源のもっている土地の歴史を紐解いていくことをテーマとした。歩きながら気づくのは、たとえば「水路」の多さ。現在は暗渠となって目に触れることはできないが、かつての暮らしは、とても身近に「水」があったことが想像できる。
 あるいは寺院もまた身近な存在であった。「子どもの頃は、寺子屋のように夏休みには勉強に行っていた。京都などのようにお寺でコンサートを開いたりして、地域のパブリックスペースとして活用してみたい。」などという感想も出された。中心地には寺院がたくさんある。水沢駅を当時の街の中心ではなく、お寺やお墓のある少し街外れにつくったために、結果として寺院が郊外に移転し、その中に繁華街が形成されたというのが水沢の中心街の特徴と言える。
 市民でもある研究班のメンバーもまた、歩いてみて初めて気づいたことがあった。
「歴史的な資源について、一つ一つ掘り下げる研究はあっても、点ではなく面として眺めるというのはやってきませんでした。実際、歩いてみて、商家ゾーンと武家屋敷ゾーンが分かれていることも初めて気づいたくらいです。『まち』という面で、資源をトータルに結びつけていきたいという思いが生まれてきたのは、地元学のお陰です。」

●300年の歴史にふれて
約4m四方の布で「資源マップ」を作成(写真提供/胆江日日新聞社)  第3回は10月16日に開催。前回にひき続いての散策だが、今回は特に「歴史」をテーマとし、平成12年度に市の補助事業によって作成された「歴史回廊」というパンフレットや昭和5年の地図を参考にしながら、主に史跡などを詳細に見て回り、聞き取りも行った。水沢は三偉人を輩出した土地である。三偉人とは、高野長英、後藤新平、斉藤實である。幕末から昭和にかけて、激動の時代の中で先見性と行動力をもって新しい思想や政治をつくってきた人々。幸い今も残されている武家屋敷や街の面影からその足跡をたどれることは、水沢ならではの大きな特徴である。
 「300年間の歴史に触れられ、生きた勉強ができる、非常に恵まれた地域だったんだと再認識しました。このことを子どもたちに伝えなければならないと思いました。今、学校では水沢の歴史をあまり教えませんので、30代くらいから下の世代は街の歴史をほとんど知りません。歴史を伝えていない私たちは、後世に罪なことをしてしまうのではないか、とさえ思いました。」と、研究班のメンバーが語る。確かに、地域の歴史を知ることが、地域を身近に感じ、地域を好きになる要素の一つであるに違いない。
 12月3日に開催された第4回では、資源マップを作成した。保存したり展示したりすることを考慮し、マップは約4m四方の布の上に作られた。2度の街歩きによって集められた資源は150ヶ所以上。目に見えるポイントを書き込みながら、「ルート」だったり「人材」だったり「季節感」だったりと、目に見えない資源までメンバーには見えているかのようである。それらを有機的につなぎ合わせることが今後の課題となるのだろう。

●歴史的資源をビジネスに展開したい
第5回は「資源をどう活かすか」を話し合った  「地元学 in 水沢」は、平成16年度の水沢地方振興局地域活性化事業調整費を活用して行われたもので、1月、2月にアクションプランを作成し、計6回で修了する。来年度はプランに基づき、水沢商工会議所が「仕掛け」を行っていくことになるだろう。
 「今までの地域づくりは中央から指導があり、成功事例のモノマネをしてきました。リトル東京、リトル仙台をつくろうとして、水沢らしさが閉ざされてきました。地元の背丈で、地元に合ったことをするのは時間がかかることですが、地域の人が地域のことを知って好きになり、そしてはじめて地域のことを人に話したいと思うものです。大きなイベントをするのではなく、365日暮らしやすく、人を温かく受け入れられるまちづくりをしていきたい。」と菊地さんは地元学から見えてきた方向性を語る。現時点では、商店街という地域特性や人材を活かしながら「食」と「遊び心」を取り入れ、「楽しんで歩いてもらう工夫をしよう」というのが、メンバーの多数意見のようである。