いわて地元学実践フィールド 信仰を集める冬部のシンボル「七滝」。周辺の環境整備に力を入れている
信仰を集める冬部のシンボル「七滝」。周辺の環境整備に力を入れている
 
実例 11
葛巻町冬部地区
葛巻町冬部地区 「冬部の里づくり」で地域活性化


地域の現況
葛巻町冬部地区は町の北端に位置し、一戸町と境を接している山間地域。住民は馬淵川沿いに点在する冬部・市部内・名前端の3地域7集落に生活している冬部地区は、古くから信仰を集めている「七滝」があることで有名。馬淵川に注ぐ七滝沢の上流に落差47メートルの滝が7段にわたって流れ落ち、森の中に清らかなしぶきを上げている。七滝の周辺は、中間温帯の主要な構成樹種の一つ、イヌブナ(クロブナ)の北限の自生地でもある。
冬部地区世帯数122戸、人口は約300人
冬部の里づくり活動部 部長の下田稔さん

冬部の里づくり活動部
部長の下田稔さん
平成15年度の幹事長 大平守さん

平成15年度の幹事長
大平守さん

 

●自分たちが立ち上がらなければ、地域を変えられない
 豊かな自然が残り、葛巻町の中では比較的温暖な冬部地区だが、昭和30年代まで盛んだった林業、養蚕などが衰退したこと、さらに離農者の増加などが要因となって、現在まで人口の減少が続いている。昭和45年に約900人いた人口は30年間で約3分の1まで減った。
 子どもたちの数も減り、平成になって冬部中学校が葛巻中学校に統合される計画が持ち上がった。 PTAや同窓会などで構成した冬部中学校統合推進協議会は、平成12年、統合の受け入れを決めた話し合いの中で、名称を「冬部地域振興協議会」に変更し、地域活性化を目指す団体へと移行した。葛巻町では、その対応窓口を町づくり推進課(現企画財政課)とし、両者の間で中学校統合後の地域振興策の検討に入った。
 平成13年6月、同振興協議会は、今後の冬部地区の方向を話し合うため、「冬部地域を考える懇談会」などを開催し、地域住民の意見の集約を図る。
 住民は、心のよりどころでもあった冬部中学校の閉校を目の当たりにし、「このままではいいわけがない」と強い危機感を抱いた。話し合いを進めていく中、町に中学校の統合条件を要望するだけでなく、自分たちが立ち上がらなければ地区を変えられないことを自覚していった。

●「冬部の里づくり委員会」の結成

広田教授の指導の下で行われたマップづくり。作業が進むに連れ、活動への理解が深まっていった
広田教授の指導の下で行われたマップづくり。作業が進むに連れ、活動への理解が深まっていった
記憶をたどりながら復元したバッタリー
記憶をたどりながら復元したバッタリー
「七滝周辺の環境整備」で植樹する子どもたち
「七滝周辺の環境整備」で植樹する子どもたち
熊野神社のペンキ塗りと環境整備風景
熊野神社のペンキ塗りと環境整備風景

 「地域調査をしたい」という自治会の意向を受けて、町は岩手大学に地域資源の調査と地域計画策定の協力を要請した。 冬部地域振興協議会は、山形村の「バッタリー村」と久慈市山根六郷地区が開催する「くるま市」を視察。さらに県内各地で地元学を実践する岩手大学農学部の広田純一教授を講師に迎え、「地域づくり研修会」を開催し、地元学と地域づくりの意義を学んだ。
 平成14年4月、具体的な活動を行うための組織体制づくりに着手する。冬部地域振興協議会、岩手大学農学部、町づくり推進課を再編した葛巻町企画財政課の三者で、地域づくりの課題を協議する活動の名称を「冬部の里づくり」とするとともに、活動主体となる「冬部の里づくり委員会」を組織した。

●地元学から地域づくりへ
 最初の取り組みは、平成14年6月と8月に行った「みんなで歩こう会」。延べ90人の参加があった地域調査では、地区の「お宝」と思われるものを探して写真に撮り、メモして「お宝カード」にまとめた。1カ月後、作成した「お宝カード」を「山にかかわるもの」「川にかかわるもの」「集落にかかわるもの」などに分類し、「お宝分類図」を作成。9月にはお年寄りが話す「昔話を聞く会」を開催。地域の方言や歴史をしのび、記録するいい機会となった。
 「歩こう会」で調査した「お宝」のデータは、10月の「お宝マップを作る会」絵地図などにまとめられた。その内容と達成感は次の実践テーマの検討で生かされる。
 平成15年に「冬部の里づくり委員会」の幹事長を務めていた大平守さんは、このころ、「資源調査をしていた最初のころは、『何をやっても、どうせだめだろう』という冷ややかな声もありましたが、実践活動を始めてマップづくりが進むと、考え方がだいぶ変わってきました。」と話していた。
 11月からは次年度の「実践テーマを考える会」を開催。ここでは次のような実践テーマの考え方で進めることにした。
(1)15年度4月から開始して、秋・冬までかかっても目に見える成果が出ること。
(2)自腹を切ってでもやること。行政を当てにするばかりではなく、自分たちの地域を自分たちで何とかするという気概を持つこと。
(3)個人個人のそれぞれの得意なことを生かして、なるべく大勢の人々がかかわれるようにすること。
 3月に開かれた報告会では、14年度の活動経過を振り返ったあと、岩手大学が地域診断、冬部地区の特徴、人口の推移予測などの説明を行い、将来構想(案)を報告した。地域診断では、高齢化率が高い、町外で働く人が多い、人口維持の見通しが厳しいことなどが説明された。
 5月には同窓会に配布する「冬部マップ&ガイド」の編集作業が始まった。七つの集落ごとの「お宝マップ」の中から、「冬部マップ&ガイド」に掲載する「お宝」を抽出し、年中行事、郷土料理、伝統芸能などについて内容を検討した。6月22日の「七滝周辺の環境整備」には、100人を超える冬部地区の住民が集まった。七滝へ通じる参道の入り口付近から1キロにわたって植樹したあと、昔の記憶を頼りにバッタリーを復元した。
 8月15日のミニコンサートと同窓会の日。夜7時半から旧冬部中学校の校庭で始まった同窓会は、夜遅くまでにぎわった。9月には、映画のロケ地となった旧毛頭沢分校の校舎の清掃と補修を行う。11月は市部内集落の「マラ井戸」横に東屋を建てた。

●冬部地区全体の活動につながる
 平成16年11月にも、地区民100人以上集まって、案内板と道標の設置などの作業を行った。
 現在の事務局長・小倉廣身さんは、これまでの活動を振り返り、「以前は自治会単位でしか集まっていなかったものが、子どもからお年寄りまで、冬部地区全体が集まる機会が増え、みんな顔見知りになれました。」とコミュニケーション面での成果も評価する。「現在は七滝・茶屋(郷土食)・冷泉・環境整備・冬部サロンの5チームに分かれて活動しています。平成17年度からの、これからが本番です。」とコミュニティビジネスへの発展にも期待を込める。
 冬部の里づくり委員会は、現在「冬部の里づくり活動部」と呼ばれている。活動部長の下田稔さんは「平成17年は冬部小学校も統合され、学校がなくなってしまいます。なんとか過疎化を止めるために、地域活動を続けながら、道路の整備なども要望していきたいですね。」と語っている。

【冬部の里づくり活動部】
事務局 葛巻町田部字下冬部27
TEL.0195-66-1304 FAX.0195-66-1305(小倉廣身)