いわて地元学実践フィールド  
先進地実例2 三重県いなべ市藤原町・松阪市嬉野町・河芸町・松阪市飯南町 市町村職員の研修プログラム「三重ふるさと学」 三重県いなべ市藤原町・松阪市嬉野町・河芸町・松阪市飯南町


地域の現況
北勢町、員弁町、大安町、藤原町が合併し、いなべ市が市制施行(平15.12.1)。松阪市、嬉野町、三雲町、飯南町、飯高町が合併し、松阪市が市制施行(平17.1.1)。
○松阪市嬉野:ハウス栽培の嬉野大根が有名。
○松阪市飯南:県のほぼ中央に位置し、お茶の産地で、深蒸し煎茶が特産品。
○河芸町:年間の平均気温は15.0℃で、降雪もほとんどなく、1年を通じて温暖で恵まれた気候。
○いなべ市藤原:藤原氏ゆかりの地として繁栄。農業を中心として発展した田園地帯。

○三重自治会館組合
三重県津市桜橋2丁目96自治会館1F 
TEL 059-223-4431
三重ふるさと学の人のかかわり
[案内人]「あるもの探し」「水のゆくえ」の調査の道先案内をする地元の人 [地元の行政職員]研修生として参加する。地元案内人とともに案内役をつとめる [地元学リーダー]吉本哲郎氏をはじめとする地元学実践者
[食の案内人]交流会で地元食材を使ったお料理で、伝統食を紹介する
三重
ふるさと学
[研究者]地元学に関連する分野の
専門家
[地元の人]交流会や作業に参加し意見を交換する。取材を受ける [民泊]研修生の宿泊を受け入れて交流を深める [研修生]リーダー研修およびスリーステップスノーステップ
  三重ふるさと学研究資料
(三重県自治会館組合作成)より

 

●三重流地元学の誕生
 三重県において地元学が実践されている背景には、三重県自治会館組合の存在がある。三重県自治会館組合は、地元学を市町村職員の研修プログラムとして採用し、研修全般の企画運営を行っている。
 市町村が人材育成を考えることになった経緯には、69市町村を代表する36人の研修担当者で構成された三重県市町村職員研修検討委員会の2年間にわたる研究がある。三重県市町村職員研修検討委員会は、まちづくりには自ら政策を企画し、実現する人材の育成が求められているとして、人材育成のための研修プログラムに地元学の手法を採用した。三重県独自の地元学として誕生した「三重ふるさと学」は、平成11年度から、三重県内のモデル市町村を対象に実践が始まった。

●民泊を取り入れた人のかかわり

水のゆくえの調査が行われた地域の水源に立つ高橋さん(右)と三重県自治会館組合の上村美貴さん
水のゆくえの調査が行われた地域の水源に立つ高橋さん(右)と三重県自治会館組合の上村美貴さん
ほのぼの休憩所の活動を語る中山さん(左)と尾上さん
ほのぼの休憩所の活動を語る中山さん(左)と尾上さん
「三行地区の良さを再確認することができたので、ぜひ孫子の代に伝えていきたい」と地元支援の様子を振り返って歓談する地域のみなさん
「三行地区の良さを再確認することができたので、ぜひ孫子の代に伝えていきたい」と地元支援の様子を振り返って歓談する地域のみなさん
地元受け入れの様子を話していただいた長井さん(左)と野呂夫妻
地元受け入れの様子を話していただいた長井さん(左)と野呂夫妻

 三重ふるさと学での人のかかわりから、目指す多様な側面が見えてくる。それは、地域の風土と暮らしを見つめ直す人づくり、地域づくりの実践活動を地域の人と協働で行うきっかけづくり、地域資源や生活文化の再発見、地元住民と行政と研究者とが協働する手法を学び体験することなどである。また、三重ふるさと学での人のかかわりとして重要な意味をもっているのが、民泊である。三重ふるさと学は、風の人と土の人が、互いを知り、交流を深めるため、グリーンツーリズムの手法から「泊まる」「食べる」「楽しむ」ことを研修のプログラムに取り入れている。なかでも民泊は、受け入れ側の地元の人に好評であるという。

●モデル地域の実践
□いなべ市藤原町立田地区(旧藤原町)
 いなべ市藤原町は、三重県の北端に位置し、西に鈴鹿山脈が連なり、岐阜県、滋賀県に隣接している。
 立田地区では、山村留学制度を地区ぐるみで支援する活動を行っている。昭和63年より始まった山村留学制度は、立田小学校を守ろうという住民の発想から生まれた。
 「高速交通時代を迎えて、都市への人口流出が進む中、立田小学校の児童数が減少し、このままでは地域の存続も危ういという危機感があったのです。」と語る高橋賢次さん。都市から留学生を迎えて1年間地域でめんどうをみる山村留学では、地区が丸ごと教材で、地区住民がみんな先生となる。
 「2泊3日の予定で行われた地域調査に戸惑いはありませんでした。山村留学の体験学習のために地域資源の掘り起こし作業を実施した経験が生かされました。地元の人が、初めて会った人とすぐに親しくなれたことに驚いた。地元学に違和感が無いのは、これまで地域のみんなが、山村留学制度の取り組みの中で、なぜふるさと(地元)を選択するのかを深く考えた経験があるからでしょう。」と高橋さんは語った。
□松阪市嬉野町中郷地区(旧嬉野町)
 三重県の中部にあって、日本最古の墨書文字土器発見の地で一躍話題になった松阪市嬉野町は、西に山を望み、渓谷をぬって流れる中村川に沿って集落が発展してきた町である。
 8つの自治会がある中郷地区は、嬉野町内でも最大の面積をもつ山間地域で、滝之川、宮野、矢下、合ケ野と進むにつれて山ひだが深くなっていく。三重ふるさと学で水のゆくえ調査に取り組んだ合ケ野には、ほのぼの休憩所が設けられていた。
 「ふれあい市を毎月1回第4日曜に開いています。よもぎもちや田舎あられが好評です。もうけは考えていません。合ケ野を知っていただきたいという思いだけです。」と語る合ケ野自治会長の中山和幸さん。ふれあい市のめんどうをみる尾上宗市さんは、「なによりも地域の人が元気になった。」と笑みをみせた。
□河芸町三行地区
 三重県の県庁所在地である津市の北方8キロにある河芸町は、伊勢湾に面した海沿いの町で、伊勢街道の宿場町として知られている。
「三重ふるさと学を初めてやってみて、目が覚める思いをしました。地元学は、地域の活性化がどうあるべきかを理解するきっかけになる。」と語る市川澄生三行区長は、地元学によって郷土を愛することや地域を見直す意識が高まったと活動を振り返る。
 三重ふるさと学の実践を支えた地元の方々の中でも、特に活躍をみせたのが、地元の婦人のみなさんである。地元の伝統食を心をこめて作り、民泊のお世話を快く引き受けた婦人のみなさんに話を聞くことができた。
 「10年になるぬか床の漬物を出したら、好評でした。この辺では、ぬか漬けを“どぶ”と言うんです。みんなで食材を持ちあって協力しました。夜の交流会では、味ご飯を食べてもらって、すごく喜んでいただきました。」三重ふるさと学の最も強力な支援者の笑顔がそこにあった。
□松阪市飯南町有間野地区(旧飯南町)
 松阪市飯南町は、三重県の中南部の内陸にあり、櫛田川の中流に位置している。櫛田川によって南北に二分され、起伏の大きい山々に囲まれた地域は、面積の77%が急傾斜地である。
 有間野地区を案内いただいた中村伸次さんは、三重県市町村職員研修検討委員会の委員を務めた方で、早くから地元学の有効性を確信した一人である。
「地域をどう選ぶかが課題でしたが、山村留学やホームステイなど、普段から他地域との交流のある有間野地区を選びました。」と語る中村さんとともに有間野地区を訪ねた。
地元学の絵地図に描かれた地域を訪ねると、三重ふるさと学を研修者と一緒に取り組んだ地元の人に出会うことができた。
 「まるでお祭り気分でした。地域のみんなが楽しみにして研修のみなさんを迎えたんですよ。泊まってもらえない家では、がっかりしたぐらいです。」と話すのは野呂平さん、弥生さん夫妻と長井幸さん。

●波紋のように広がる三重ふるさと学
 市町村合併が進む三重県では、平成16年度で47市町村と自治体の数こそ減少しているが、三重ふるさと学の精神は変わることなく波紋のように広がりをみせている。三重ふるさと学の魅力を知った研修生の中には、自分の地域で率先して地元学に取り組む方もいる。養殖真珠発祥の英虞湾で知られる志摩市阿児町では、町内7地区の中で4地区で実施している。三重県自治会館組合では、平成17年度にも三重ふるさと学の実施を予定している。