新着案内いわてさんNo.201- 今月の特集
今月の特集~スタッフからのおすすめ
今年もご利用ありがとうございました。今月は当センターのスタッフからのおすすめ本を紹介します。それぞれの一言も添えていますので、気になる本がありましたらリクエストをお寄せください。
所蔵形態の後に(他)とあるのは他施設所蔵の図書です。岩手県内にお住いの方には当センター経由で貸出しが可能です。また、本欄で取り上げた音声デイジー図書をテーマごとにまとめた「特集パック」も用意しています。利用の方法など詳細はお問合せください。
「コーダ」のぼくが見る世界
五十嵐大著
所蔵:点字(他) 音声デイジー(他) テキストデイジー(他)
内容:もし、親の耳が聴こえたら―なんて、想像もつかなかった。聴こえない親を持つ聴こえる子ども=コーダが、ろう者とも聴者とも違う、複雑なアイデンティティについて語る。
一言:聴覚障がいのある親をもつ聞こえる子供を指す「コーダ」が社会に浸透し始めたのはここ数年でしょうか。この本では、コーダである著者が経験してきたことや心の動きが率直に綴られており、コーダの知られざる一面やコーダが抱く複雑な思いを知ることができます。共に生きる社会のあり方を見つめ直すきっかけになる一冊です。
言語沼
堀元見、水野太貴著
所蔵:点字(他) 音声デイジー(他)
内容:言語オタクの水野が、言語学の素人を言語沼に引きずり込む! 「やまかわ」と「やまがわ」の違い、「ヘリコプターで山を登った」は変? 知っているようで知らない言語にまつわる話を、2人の会話でゆるく楽しく紹介します。
一言:直感的には分かるけど、説明するのは難しい現象が次々出てきます。ぜひ一緒に考えて、2人の議論に参加してみてください。脳トレにもなると思います。
終わらざる夏 上・下
浅田次郎著
所蔵:点字(他) カセット(他) 音声デイジー(他)
内容:第二次大戦末期。「届くはずのない」赤紙が、彼を北へと連れ去った…。あの戦いは何だったのか。着想から30年、浅田次郎が北の孤島の「知られざる戦い」を描く。人間の本質に迫る戦争文学。
一言:終戦直前に召集された人と家族を描いた小説。登場人物の翻訳家、医師、軍人が盛岡出身の人であるため、風景描写や話し言葉も身近に見聞きするもので、当時こういうことが本当にあったんだろうと想像しながら、どんどんページが進みました。
母の待つ里
浅田次郎著
所蔵:点字(他) 音声デイジー(他)
内容:家庭も故郷もない還暦世代の3人の男女の元に舞い込んだ〈理想のふるさと〉への招待。奇妙だけれど魅力的な誘いに半信半疑で向かった先には、かけがえのない〈母〉との出会いが待っていて…。
一言:舞台は岩手県の田舎町。セレブ向けのカード会社がふるさとを求める顧客に架空の里帰りツアーを提供します。旅行した人は母(宿で母として接待する女性)の心のこもったもてなしに癒され再びツアーに申し込みます。今年夏にNHKでドラマ放送されました。
金環日蝕
阿部暁子著
所蔵:点字 音声デイジー(他) テキストデイジー(他)
内容:ひったくりの現場を目撃した大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに犯人を追うが、間一髪で取り逃がす。春風は、ひとりで犯人捜しをしようとするが、錬に押し切られて二日間だけ探偵コンビを組むことになり…。
一言:読んでみたい本のご紹介です。今をときめく本屋大賞『カフネ』の阿部暁子さんの作品(『カフネ』より前の作品)です。「“犯罪と私たち”を真摯かつ巧緻に描いた力作」とあり、ボリュームのある本でなかなかとりかかれずにいます。じっくり集中して読みたいものですね。
ものがたり洋菓子店 月と私
野村美月著
所蔵:点字(他) 音声デイジー(他)
内容:仕事も恋愛もぱっとしない岡野七子がたどり着いた、住宅街の洋菓子店「月と私」。そこには、お菓子にまつわる魅力的なエッセンスを引き出して、物語としてお客に届ける「ストーリーテラー」がいた…。
一言:なんといっても、登場するお菓子の描写が秀逸で、スイーツ好きにはたまらない。現在のところシリーズ5巻まで出版されているが、次にどんなお菓子が登場するのか、主要人物たちの物語がどのような結末を迎えるのかも、気になるところである。
神様の定食屋
中村颯希著
所蔵:点字(他) 音声デイジー(他)
内容:妹とともに両親の遺した定食屋を継ぐことになった哲史は、なぜかこの世に未練を残した魂に憑かれることになり―。母のチキン南蛮、夫のオムライス…人とご飯を繋ぐハートフルストーリー。
一言:魂から料理を教わる代わりに、その魂が望む相手に料理を振る舞い、未練を解消する手伝いをする主人公。誰かのために料理を作るって、相手の食欲を満たすだけでなく、想いを伝える行為でもあるんだなと気付かされました。
窯変源氏物語 1~14
橋本治著
所蔵:点字(他) カセット(他) 音声デイジー(他)
内容:千年の時の窯で色を変え、光源氏が一人称で語り始めた―原作の行間に秘められた心理的葛藤を読み込み壮大な人間ドラマを構築した画期的現代語訳の誕生。
一言:光源氏といえば優男というイメージですが、この橋本版源氏は違います。才能と美貌に恵まれたがゆえに満たされない、冷酷で自己中心的な男性として描かれています。その傲慢さ、冷酷さがいっそ気持ちいいです。
お誕生会クロニクル
古内一絵著
所蔵:点字(他) 音声デイジー(他)
内容:お誕生会が禁止された小学校、母が台無しにしたお誕生会、お誕生会好きの会社の上司、3.11に祝うお誕生会…。お誕生会をめぐる人間模様を描いた7つの短編を収録する。
一言:お誕生会の響きが懐かしくて手に取った一冊。特に1話目の「万華鏡」、最終話の「刻の花びら」がよかったです。また連作短編のため、前話に出ていた人物が次の話の主人公になっていたりして、ああ実はこんな事情や内面を抱えていたんだな、というのも垣間見れて面白かったです。
言葉の園のお菓子番
ほしおさなえ著
所蔵:点字(他) 音声デイジー(他) テキストデイジー(他)
内容:書店員の職を失い途方に暮れる一葉が出合ったのは、言葉と言葉が深いところでつながり連なる「連句」という不思議な場。一番にならなくてもいい自由で豊かな居場所を得た一葉は自分のペースで歩き始め…。
一言:連句という世界があることをこの本で初めて知りました。短歌でも俳句でもない。いろんな人が集まって連句を巻いていく様子は興味深いです。連句のルールが本文中でうまく紹介されているので、知らなくても楽しく読めます。
夜は短し歩けよ乙女
森見登美彦著
所蔵:点字(他) カセット(他) 音声デイジー(他)
内容:「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。ふたりを待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった…。キュートで奇抜な恋愛小説in京都。
一言:内容は思いっきりファンタジーですが、京都を舞台に大学生の男性「先輩」とその後輩の「黒髪の乙女」が交互に主人公になってすすんでいくお話です。出てくる登場人物やストーリーはあり得ないながらも独特の雰囲気があって、京都の夜を想像してワクワクしながら当時読みました。下鴨神社や鴨川デルタ、先斗町、木屋町など、京都の町を彷彿とさせるワードも京都好きにはいちいちたまらなくて大好きな本です!「偽電気ブラン」というカクテルも飲んでみたいですー。
二つの祖国 上・中・下
山崎豊子著
所蔵:点字(他) カセット(他) 音声デイジー(他)
内容:真珠湾、ヒロシマ、東京裁判。戦争の嵐に翻弄され、身を二つに裂かれながら、祖国を探し求めた日系移民一家の劇的運命を描く。
一言:昭和58年のNHK大河ドラマ「山河燃ゆ」の原作で、当時中学3年生の私にとって、とても衝撃的な内容だったのを覚えています。大人になって原作を読み直し、あらためて壮大で深いテーマの作品だと感じました。読みごたえがあります。