環境学習交流センター
環境学習交流センターのタイトル画像

岩手県内先進企業取材レポート

<第五回目>  (株)篠崎運送倉庫

  環境貢献とコスト削減を叶える国内初の全木造定温倉庫で、倉庫の未来を変える!               ~(株)篠崎運送倉庫の取組みについてご紹介​~​ ​ ​                                                                                                                                                                                                                                                                        

 総合物流業を手掛ける(株)篠崎運送倉庫(本社:埼玉県鴻巣市)では、北上市の岩手支店に昨年6月、全木造定温倉庫を竣工しました。この全木造定温倉庫とは、環境に配慮した次世代型木造倉庫のことで、国内営業倉庫登録状況において国内初の事例として注目されています。

 今回は、(株)篠崎運送倉庫の代表取締役社長を務める山岸優太さんに、全木造定温倉庫を建てた経緯、コスト面や環境面で感じるメリット、今後の展望についてお話を伺いました。

 

                1

                  [(株)篠崎運送倉庫 代表取締役社長 山岸優太さん] 

 

◎全木造定温倉庫を建てた経緯について

 (株)篠崎運送倉庫は、本年で会社設立55周年を迎えます。創業して間もない頃から自社倉庫を保有し、保管・在庫管理・流通加工等を含めた物流に関わる全てをワンストップで提供する体制を整え、お客様のニーズにお応えしてきました。

  順調に事業拡大を続ける中、岩手支店を2017年に開設。当時建てた倉庫の構造は、一般的な鉄骨造りでした。鉄骨造りは強度が強い一方で、室内の熱伝導率が高くなる性質をもっています。倉庫内は玄米や大豆等の穀物類の保管が中心で室内温度を常に15度以下に保つ必要があるため、壁を断熱材で工夫したうえで大きい空調設備を導入し、常時稼働することで定温を保っていましたが、当然のことながら、この状態を維持するためには膨大なコストもかかってきます。山岸さんは倉庫の未来に向けた改善のための方策を、いろいろと考えるようになりました。

(山岸さん)「鉄骨の一般的な倉庫を建てることを考えると、高価な断熱材と大型空調設備の導入から始まって、さらに空調の常時稼働によって生じる電気代も含め、コストの負担はかなり大きくなってしまうんです。お米って、ご承知のとおり皆さんが手軽に食べるもので安く売ってますので、保管にかかる経費を抑えないと費用対効果が合わないんですよ。このコストを下げるにはどうしたらよいのか、すごく悩みましたね。断熱しなくてよい倉庫を作れないかなあ、なんて考え始めたんです。いろんな方に相談させていただくなかで、仙台市内で木造ビルが建ったというニュースを知りました。そのビルでは、木造は断熱性が高く空間も快適になる、との話も聞きました。木造でビルが建てれるんだったら、倉庫でもできるんじゃないか?と思いまして、本格的に調べてみたんです。」

 山岸さんが木造建築について調べてみると、現在では耐久性も高くなっており設計面でも問題ないうえ、倉庫内の温度管理は家庭用のルームエアコンで十分対応できることがわかりました。ただ全木造定温倉庫なんて前例がなく、見たことも聞いたこともない倉庫の建築構造であるがゆえに、構想段階で社内からは反対の声もあがりました。

(山岸さん)「アタマおかしくなったんじゃない?とか言われたこともありました(笑)。でも計算上、最初の段階から長期的に見ても大幅にコストが削減できるだろうとの見込みもあったので、あとはやるかやらないかだけ。思い切って、全木造定温倉庫を岩手支店内に建てることにしました。」 

 

 

​◎コスト面や環境面で感じるメリット​

 物流業界の仕事は、大量の物資を積んだ大型トラックで各地から各地へ長距離運行をしているのが日常であり、実際トラック車両からは多くの二酸化炭素(略:CO2)を排出しています。業界の特性として車両の維持管理は必須であり、環境に配慮した取組みを行うには、各社であらゆる工夫と努力が必要になります。

 (株)篠崎運送倉庫では、埼玉県鴻巣市の本社において地域の小中学校の給食で使われた使用済み廃食油を回収しバイオディーゼル燃料を作り、自社トラックを走らせる取り組みを長年行っているほか、創業者は日本で初めて自社トラックにアイドリングストップ装置を乗せて走っていたそうです。創業当初より、業務の中で環境貢献を意識して取り組みを行う企業風土がベースにあることが、自然と今回の倉庫を建てる流れにつながったともいえるかもしれません。

  全木造定温倉庫を建てて稼働を始めてから半年以上経過した今、コスト面や環境面でのメリットについて、山岸さんはどのように感じているのでしょうか。

(山岸さん)「まずイニシャルコストですが、木造建築は建物が軽く鉄骨造りより地盤改良が少なくて済みました。よって建物の基礎部分の工期も早くでき、総工費圧縮につながりました。あと断熱性が高い建物になったので大きい空調設備ではなく、省エネで値段も安いルームエアコンを導入することにしました。実は、大きい空調4台入れるよりもルームエアコン40台入れた方が、コストゼロ1個違ってくるんですよ。もう圧倒的に安くなりました。」

 

     2    3

             [全木造定温倉庫の外観]             [倉庫内にはところ狭しと重そうな穀物袋が並ぶ] 

 

 ランニングコストについても、驚く結果となったそうです。

(山岸さん)「ランニングコストですが、今年の夏はルームエアコンを稼働していたんですけど、昨年の支店全体の電気使用量と比べてほとんど変わりなかったんですよ。この倉庫分本当にかかってないんです。予想では通常の3分の1くらいで済むのかな、と思っていたんですけど、下手すると10分の1くらいかもしれません。木の熱伝導率は、鉄骨の400~500分の1違うという話もあります。冷気も通しにくいので、1回エアコンで冷やすとその温度が長持ちするのもいいですね。」

 倉庫を建てる際には大手ハウジングメーカーではなく、戸建て住宅を手掛ける花巻市の工務店さんに依頼したそうです。地元の木材を倉庫の柱等にたくさん使うことで、地産地消につながります。

(山岸さん)「この倉庫の稼働をはじめてから、一番の課題であったコスト削減につながって環境にも良いことをしていると実感しているので、満足度は高くなりました。木造の唯一の欠点をあげるとしたら、穀物は重いため耐荷重の関係で上に増築ができないことくらい。本当にデメリットはそれくらいで、メリットの方が大きいんです。」

 

 

◎今後の展望について​

                   4

                 [木造倉庫にルームエアコンつけただけ、と一見簡単に真似できそ                                                                   

                  うにみえるが構造は複雑であり、実は特許を取得している]                                                                       

 

 かくして岩手支店の国内初・全木造定温倉庫は、従来の課題を解決したのに加え、環境貢献にもつながるといった成果を生み出したのです。これを踏まえて昨年9月には、埼玉県行田市の自社物流センター内に第2棟目の倉庫を完成させました。挑戦を続ける山岸さんに、今後の展望について伺いました。

(山岸さん)「この倉庫だと消費電力がすごく少ないことがわかったので、今後は屋根に太陽光パネルをつけた完全自立型の倉庫を作りたいなと思っています。初期投資はかかるかもしれませんが、外部電力を使わず、まったくCO2を出さない倉庫。緊急時災害時にも活用したいと考えてまして、これが出来たら日本初になるかもしれません。私の会社経営の考えとしては、エネルギーの自給自足を目指しているのか、環境にも良いことをしているのか、ビジネス的にも成り立っているのか、という3つの視点で経営に取り組むことが重要だと思っています。環境貢献をするにはお金がかかるとなると、景気が悪くなったらやめてしまって続かない。環境に良いからって補助金出します、というのも違うかなと。環境貢献はボランティアではなく、持続可能な話じゃないとダメですよね。」

 

 

【お問い合わせ先】

株式会社篠崎運送倉庫 管理本部 

住所:埼玉県鴻巣市広田467-1

電話:048-569-1121(代)

HP:https://shinozaki.co.jp/<外部リンク>

 

 

(取材担当:とうげ)

 

 

<注意>  ※本文記事・写真・画像の無断転載は禁止させていただきます​。

 

Adobe Reader<外部リンク>

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)